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魚が空を歩いてもいいですか?

 数日前にこちらの記事で紹介されていましたチームラボさんの作品『お絵かき水族館』を見ていまして書きたくなったことをいくつか。

Sketch Aquarium / お絵かき水族館

チームラボ, 2013

この水族館は、子どもたちが描いた魚たちが泳ぐ水族館です。

子どもたちが「紙」に自由に色を塗ったり、模様をつけたりして、魚の絵を描きます。すると、他の子どもが描いた魚と共に、目の前の巨大な水族館で、その魚たちが泳ぎ出します。同じ形の魚は、群をつくったりします。子どもたち自身が水族館に近づくと、魚にエサをあげることもできます。


Sketch Aquarium / お絵かき水族館 - YouTube

  子どものお絵かきって無限ですよね、気づけば机や壁がキャンバスになっているので見ている大人は気が気じゃない時もありますけれど。

 私も子どもの頃は絵を描くのが好きでした。幼少期は折込広告の裏にスヌーピーばかり描いていました。作者へのリスペクトだの著作権だのそんなことを意識しているはずもなく、ただただ自分が理想とするスヌーピーの鼻のラインを追い求めていました。

 小学校低学年くらいになると、ノートの両端に陣地を書いてひとり戦争ごっこをするようになりました。右手と左手で勝手に戦争を始めては戦いをこじらせてノートが真っ黒になり、やがて描くスペースがなくなって終戦を迎える(それは新たな戦いの始まりでもある)ということをしていました。攻撃も防御も被害状況の確認も新兵器の開発・投入も全て自分ひとりで行うので、終わらせるのが大変難しかったです。

 高学年あたりになると学校の授業で、静物や風景画を描かされるようになります。これはこれで嫌いではありませんでしたし、学校の外に出ての写生大会は楽しい思い出しかありませんが、この頃から作品について大人から少し”注意”されるようになりました。もちろん、大人からすれば”アドバイス”だったのでしょうが。

 中学校の授業ではその傾向がさらに強くなりました。学校には学校の事情があってのことなのは今だからわかりますが、自分のこだわりとは無関係に、当たり障りがないものを見栄え良く作るほど評価が高いことを知りました。

 今思い出しても嫌なのは、抽象作品を作る(決められた材料の範囲で好きに作る)授業の時、自分が作っているところに美術の先生が来て、ダメ出しをされたことです。おそらくふざけているように見えたんでしょう。私は”マジメに”ふざけていたのに。

 納得できずに「センセー、好きに作れって言ったから!」「見た目は変やけど全部ちゃんと意味あります!」と抗議しましたが、もちろんこちらが折れることになりました。それ以来美術(芸術)は、自分を表現するものから第三者的に見るもの(批評するもの)になったように感じます。

 今でも「美術と読書感想文に正解はない」と考えていますので、私が王様になったら、まず美術の先生に作品を作らせて徹底的に厳しく採点してあげます。「はぁ?なにこれつまんない、0点!」みたいに。はい、言い過ぎましたね。

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 この『お絵かき水族館』の様子を見て素晴らしかったのは、「大人が子どもを陰で支えている」ことです。”陰で”というのは、技術のことです。子どもの想像力は無限ですが、子どもができることには限界があります。頭の中では泳いでいる魚も紙に描いた時点で動きは止められてしまいます。

 しかし、この「水族館」では、簡単に紙に描いた魚がまるでデジタルを得た高城剛のように動き出すのですから、子どもは今までの限界よりも先へ行くことができます。

 子どもが想像した世界を実現するお手伝いを、大人が作り上げた技術を駆使して行うことほど、お互いにとって刺激的なことがこの世の中にあるでしょうか。子どもは更に想像が膨らむし、大人は次の課題を見つける。とてもいい関係です。まさに「想像」→「創造」です。

 適度にアナログ的な要素を残している点も素晴らしいです。近頃盛んな「プロジェクションマッピング」は、ショー的な要素が強いものが多く、「すごーい!」「きれーい!」で終わってしまいがちですが、今回の「水族館」のような手法ならば、世代を問わず一緒に参加して楽しめます。「理屈を抜きにして誰とでも一緒に楽しめる」のは、コミュニケーションの理想型に近い。

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 テーマに沿った作品を淡々と廊下に並べた展示会、作品に「金賞」「○○長賞」などのリボンがつけられた展覧会が多いのが日本の現状でしょう。しかし近い将来、作品の制作過程や展示を幅広く楽しめる新しい手法がどんどん確立されて、身近なものになって欲しい。そうなれば、いつか世界の貧困も地球の温暖化も解決できる、子どもたちの自由なお絵かきにはそれくらいの可能性がきっとあります。

 『お絵かき水族館』を見ていると、いろいろなアイディアが膨らんできませんか?私はとりあえず『お絵かき 秘宝館』を思いつきました。中二病でごめんなさい。