大人禁制

 土俵上での挨拶中に倒れた舞鶴市の多々見市長、この記事によると回復しているそうで安心しました。

 思わぬ「女人禁制」問題に発展して、炎上しているときには書くのをためらっていたのですが、世間様も落ち着いてきたようなので当時思っていたことを書きます。

 

 あとで知った方もいると思いますが、多々見市長は医師(循環器の専門医)です。市長になる前は舞鶴共済病院の院長をしていました。詳しくはわかりませんが、舞鶴市の医療体制の再編のために立候補されたようです。

 実は私の身内も、多々見先生に診てもらっていたことがありました。「いい先生」なのはよく聞いていましたが、医師としての使命感の強さと、こちらが心配するくらいタフな仕事ぶりに、倒れたとニュースで知ったときは信じられない気持ちとやっぱりかという気持ちが交錯しました。

 なので、土俵下に医療従事者がいたのも当然と言えば当然で、あの日土俵に上がった人たちはきっと反射的に体が動いたと思います。映像を見ましたが、心臓マッサージをする姿はプロフェッショナルでした。

 医師として政治家として成してきたことが、巡り巡って自らを助けた…、「情けは人の為ならず」とは少し違うけれど、自分が信念を持ってしてきたことが(思わぬ形で)還ってきたら、やっぱり自分のしてきたことが認められたような気持ちになるだろうな。もちろん、すぐにはそんな気持ちにはならない(なれない)だろうけれど。

 ご本人の知らないところで勝手なことばかり言っててはいけないのですが、とにかく何かの節目であることは間違いないと思うので、今はとにかく無理をなさらないように、次に向けて養生に専念して欲しいです。

 

 それで、大相撲の「女人禁制」の話なのですが、史実的には明確な根拠はなさそうで、“作られた”歴史的価値観みたいなものが、相撲“協会”の「伝統」として守られてきたのではないでしょうか。

 しかし、私はその「伝統」を差別とは思いません。それを守ることが角界(と協会)にとって良いのかは彼ら自身が考えることです。私は「いい相撲」が観たい、それだけなので待つ。

 ただ、一相撲好きとしては、相撲から“神聖性”が失くなって、無味無臭の「みんなのおおずもう」みたいにはなって欲しくはないです。

 格闘技でもスポーツでもショーでもなく、相撲は相撲。興行だけど興行ではなく、庶民の娯楽でありつつ、日本を背負っているかのような“ありがた感”も持ち合わせる。この清濁併せ呑むようなところが、相撲の懐の深さでもあります。

 

 私が小学生の頃、校庭に土俵があって、校内の相撲大会も開かれていました。生徒たちは先生から、

 ・(土俵は神聖だから)土足で上がってはいけない

 ・(怪我をするから)相撲は必ず真剣勝負をしなさい

の2つをきつく言われていた(女人禁制は言われなかったと思います)こともあって、今でも、「相撲と土俵」には気軽に触れてはいけない特別な“何か”があると信じ込んでいるところがあります。だから観る方もする方も熱くなったり。

 「格闘技とリング」「レースとサーキット」「劇団と舞台」「高校野球と甲子園」「トミーとマツ」、、、そういったものが放つ“精神性”、抱く“幻想”、それらが理性を超えて人を惹き付ける。

 大相撲の場合、それが一気に冷めるのが優勝力士の表彰式。

 政治家や組織の重役などが次々に土俵に上がるのですが、命を懸けた真剣勝負の場である土俵に、相撲と直接関係のない者が上がることがまず許せません。それこそ「穢れ」です。しかも、正装にスリッパ履いて上がるんです。なんと“締まり”のない姿。

 「せめて裸足で上がれ!このゆるゆるフンドシのバチあたり野郎が!!」

 

…って、先生が言っていました。

 

 会場のスペース上の制約もあると思いますし、スポンサーあっての興行なので“ご披露”が必要なこともわかるのですが、表彰式や挨拶は土俵下ですべきです。男も女も関係ありません。個人的には、女性は土俵から降りるようにアナウンスをしてしまった呼出さんも私と同じような思いを持っているような気がします。

 どうしても土俵に上がる必要があるのであれば、相撲関係者以外は皆の前で神主さんに(形式的にでも)お祓いを受けてから上がるようにしたらどうでしょうか。「相撲=神事」という構図には収まるので、見た目にも良いと思います。

 

 それともうひとつ提案があります。

 それは土俵の近くに、専属の看護師か医師を常駐させることです。

 去年だった思いますが、NHKの相撲中継を観ていたら、画面の向こうの溜席(砂かぶり)に座っていた老人男性が倒れたことがありました。私はその老人が具合悪そうにしているときからハラハラしながら見ていたのですが、ついに倒れてしまいました。

 画面から見る限り、会場では隣りに座っていた女性が気づくまで誰も気付いていない様子でした。

 その女性はすぐに係員を呼ぶ仕草をしたのですが、なかなか来ないし、来ても元力士っぽい係員の対応には明らかに迷いがありました。結局、会場の外へ運ばれて行きましたが、なんとも危なっかしかったです。

 おそらく、ああいうことは初めてではないのに、普段から体勢が整えられていないのが実状ではないでしょうか。本場所でさえあの様子なのに、巡業先では尚更でしょう。私の予想では、巡業先任せなのではないでしょうか。

 みんなが安心して相撲を楽しめるよう各自できることをお願いします。

 対立を煽るだけの方は速やかにそこから降りてください。

 

 以上、どすこい。

  

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参考)


【トミーとマツ】「トミー変身」シーンセレクション

 女人禁制。煽らないでマツ。