好きな声

 いきなり愚痴っぽくなってしまうのですが、なぜに近頃流行りの曲は、みんなで同じパートを歌う(そして一斉に踊る)ものが多いのでしょうか。秋葉系も坂系もジャニーズ系も。一般的に、一人一人の声として認識できるのは5人同時くらいが限度では?

 80年代中盤以降、アイドルがグループ化を強めてきたことは承知しています。おニャン子クラブ、光GENJI、SMAP、モーニング娘。など。それでも、歌い手に個性はあったような気がするのです。ああ、この子は口パクだといい顔とか、この子はソロデビューしそうとか、その音程どうなの中居くんとか。そうなんですよ、下手でも何でも一人一人に見せ場はあったし、世間は歌手として見ていた感じがするのです。

 2000年代に入ると、1グループあたりの人数が随分と増えて、見た目もよく似ているし、みんな一緒に歌って踊って、なんだかもうグループと言うよりも組織、、いや、会社みたいです。人気投票の成績や立ち位置で存在感を示すというのも、すごく会社的です。

 メンバーが抜けることを、“卒業”だなんて言いますけれど、私には“人事異動”に映ります。歌は個性ではなく、全体パフォーマンスの一部になったように思います。

 もちろんファンから見れば、それぞれの“推し”は違って見えるのでしょうし、メンバーもそれぞれが差別化に一生懸命でしょうから、個性がないみたいに言っている私のほうが、頭おかCのはわかっています。

 ただ、あの表現的にも限られた「枠」の中で、個性を100%出すのは難しいし、自己表現として突き詰めていけば、いつか窮屈になるときが来るだろうな、と思うのです。

 

 って、そんなことを書いてるお前が一番窮屈やぞ!というわけで、ここらでニーナ・シモンさんの曲いってみよう。 


Nina Simone - I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free (Audio)

 私は彼女の歌声が好きなんです。決して透き通るような美声ではないけれど、人生を3回くらい見てきたような憂いを帯び、自分の心に残響が重なっていくような声。

 理屈人間の私が、歌っている内容よりも声に真実味を感じてしまうのはなぜでしょうか。人類の祖先は、夜は明かりではなく音を頼りに生きていただろうからその名残なのかと考えてみたり。(私が英語がわからないのは内緒!)

 

 さて、彼女がソロではなくグループで歌っていたらどうでしょうか。これはこれでしんどいと思うのです。彼女が大勢のメンバーと秋元康詞をユニゾンしても個性を打ち消し合うだけでしょう。

 ニーナ・シモンはソロ、寺門ジモンはトリオ、荒井注の抜けたザ・ドリフターズは志村けんが加入することで、逆にメンバーが引き立ったのも、自分の力を存分に発揮できる自由を得たことが大きかったように思います。そして、そこには自分なりの決断があったはず。(だからといって、前に出るだけが個性ではないことも付け加えておきます。)

 

 今年に入って突然、世界中が自粛ムードになって気付いたのは、今まで惰性で続けていたものの存在です。非常事態にあまり悠長なことも言っていられないのですけれど、光を失うと音や気配に敏感になるように、今は自分の声に耳を傾け、少し息継ぎをすべきときのような気がしています。

 それでは、God breath bless you.というわけで、この曲を。


ニーナ シモン ・マイ ウェイ ・1971年

 自分に正直に生きなければならないことはない。

 ただ、そのように生きた人がいることは知っておいてもいいだろう。