シャリシャリ

 シャリ、シャリ、シャリ……、シャリ、シャリ、シャリ、シャリ………、シャリシャリ…、シャリシャリシャリ……

 あの音が聞こえた気がした。白菜を食べる音だ。

 うちの犬は、白菜が好きだった。冬は鍋、鍋と言えば白菜、白菜と言えばうちの犬である。

 白菜は、母がうちの畑で育てたものである。我が家では、昔なら大根とともに糠床で漬物にしたものだが、祖母が亡くなってからは糠床もなくなり、今はもっぱら浅漬けになった。私自身は、漬物自体ほとんど食べなくなった。

 白菜を生で食べる人はあまりいないと思うが、犬は違う。人ならば、鍋の中で汁が染みてしんなりとした白菜こそが意中の白菜であるが、犬は違う。いや、うちの犬は違う。

 彼は特に白い部分が好きだった。おやつ代わりにちぎってやると、その食べっぷりは見事であった。収穫して小屋に置いてある白菜を勝手に食べてしまうこともあったのだが、犯行現場には青い葉の部分が多く遺されていた。

 犬は必ず、その瞬間に欲しいものから食べる。小市民のように“念のために”とっておくようなことはしない。腹が満ちればあとは残すだけだ。かと思えば、「もう要らないんだな?」と念押しして片付けようとすると、慌てて食べに来たりする。たまらん。

 写真の前に白菜を置いた。小ぶりだが、味は良いはずだ。足りなければ言ってくれ。

 

 亡くなってから丸3年が経った。月日が随分と癒やしてくれた。くれたはずなのだが、2年前の日記を読んでまた少し思い出してしまった。

meganegadoushita.hateblo.jp

  冬の日本海には珍しく、今日は朝から晴れている。あの日と同じだ。読んでから気付いたのだが、なぜか日記には書かれていない。

 確かに晴れていたのに。