酒と泪と…

酒と泪とアセトアルデヒド【完】

いち子は、インテリア関係の販売会社に就職した。一息つける場所を残しておきたかったのか、バイト先はすぐには辞めず、仕事帰りに来たりしていた。 いち子の配属先のお店は、大阪の有名な商店街の中にあった。 「へたっちょも、遊びに来てよ!」とよく言っ…

酒と泪とアセトアルデヒド【6】

私は、近頃いち子の様子がおかしいと感じていた。妙によそよそしいのだ。 誰でも機嫌の悪いことくらいはある。こちらがいつもどおりに接していれば、そのうち元に戻るだろう。最初はそのくらいに思っていた。 しかし、どうやら私にだけ様子がおかしいことが…

酒と泪とアセトアルデヒド【5】

バイト先の厨房でいち子に交際を断られた後、確かにフラれたショックはしばらくあったが、いち子との関係は変わらなかった。 これは決して、負け惜しみや強がりなどではない。バイト先の気の合う二人のままだった。どちらかが(まあ私だ)が、これ以上を欲し…

酒と泪とアセトアルデヒド【4】

あなたに好きな人がいるとする。 そのことを一番先に誰に伝えるべきか。 それは、あなたの好きな人、その人である。 私のバイト先(カラオケボックス)には、アルバイトの主のような男性がいた。 昼間も別のところで仕事をしていると言っていたが、決まった…

酒と泪とアセトアルデヒド【3】

「…好きや。」 だったか、もっと軽い調子だったか、もう言い回しは忘れたが、私は酔った(勝利の)勢いもあって、いち子に告白をした。 彼女のわがままな言動も、読めない行動も好きだったし、何より一緒にいて楽しかった。彼女も私との居心地の良さを感じて…

酒と泪とアセトアルデヒド 【2】

私が働いていたカラオケ店(カラオケボックス)は、基本的に社員は1人(店長)、あとはバイト(パート)が曜日や時間帯によって2~4人程度入る体制だった。時給は780円~900円くらいだったか。 勤務時間は、昼・夕方・深夜のシフト制だった。私は、夕方勤務…

酒と泪とアセトアルデヒド 【1】

私がカラオケ店でアルバイトをしていた頃、店内にはよく安室奈美恵の『Body Feels EXIT』が流れていた。 ♪ここまでどんな 道を歩いて あなたにやっと たどり着いたかを 説明しよう。口から入ったアルコールは胃から20%、小腸から80%が吸収され、その大部分…