固定観念ちんねんさん

 みなさんは、「管楽器」にどんなイメージを持っていますか?私は、今でこそ、ブラスロックやファンクを抵抗なく聴いていますが、かつてはクラシックな楽団員やアダルトなジャズミュージシャンが、かしこまって演奏する(そして座って聴く)イメージしかありませんでした。今回は、それらを壊してくれた人たちをご紹介します。

 まずは、フルート。Jethro TullのIan Andersonです。おそらく、ビジュアルにおいては、野球の王貞治さんか、それ以上に世界にインパクトを与えた一本足の使い手です。(足だけど)

 ちなみに私は今でも、彼はフルートの“声”を出しているだけ説を信じておりますが、彼の存在を教えてくれた友人Y君に感謝しています。


Jethro Tull - Bourée (French TV, 1969 'La Joconde')

 

 次にサックス、元SOIL & "PIMP" SESSIONSの元晴さんです。彼の演奏、、というかスタイルに出会って初めて、サックスがこんなにも熱く、豊かな音が出る楽器であることを知りました。

 彼らのLiveには何度も行きましたが、他のメンバーや会場の雰囲気が落ち気味の時でも、元晴さんのソロが入ると必ず上がっていったのをよく覚えています。最高なサックスプレイヤーです。


SOIL & "PIMP" Sessions - Mature

 最後にトランペット、先日亡くなった近藤等則さんです。初めて知ったのは、NHK金曜時代劇『腕におぼえあり』(1992年) の主題歌でした。ドラマも面白くて毎週欠かさず見ていました。

 彼の演奏は、硬質でありながら生々しくもある、初めて接する音でした。私がいわゆる“電気マイルス”を知るのは、このずっと後だったのですが、音のインパクトは、Miles Davisよりも近藤さんのほうが大きかったです。


腕におぼえあり オープニング

 …と、そんなこと言いながら、それからの私はTMネットワーク~小室サウンドを追いかけていき、、、迷走を重ね再び彼にたどり着いたのは、ラジオから流れてきたMETHOD OF DEFIANCEのアルバム『INAMORATA』(2008年)の曲でした。「あれ?このトランペット、どこかで聴いたことあるぞ。耳におぼえあり!」というわけで、嬉しくて買いました。しかし、音源を聴いて戴くとわかるのですが、あっちの“TK”に行っていた身には、なかなか近寄り難い存在になっていました。


Method Of Defiance "Humanoid"

 それからしばらくして、私は遠い存在だったはずの彼のソロLiveを地元で聴く機会に恵まれました。この頃になると、彼は自然(宇宙)と一体になる音楽を志向していて、正直なところ、私が影響を受けた音楽とは異なっていたのですが、目の前で演奏している、ただそれだけでありがたく感じました。

 そしてなんと、終演後に直接お話をすることもできました。ものすごく緊張して、やっと出た質問が「吹いてるとお腹減りません?」だった私に、「ラッパ吹く前は、何も食わねぇんだよ。腹の中にあると吹けないの。」と穏やかに答えてくれました。

 ちなみに、『腕におぼえあり』の話もしたのですが、ご本人はあまり覚えていない様子で、残念でした。今なら分かるのですが、これは常に新しい“今”を追い求めていたから。(もしくは、酔いが回っていたから)

 もう一度、音色とお話を聴いてみたかったけれど、叶いません。近藤さん、私の音楽観を豊かにしてくれて、ありがとうございました。これからは、面白い風の音がしたら、あなたと思うことにします。