くだらない年末

 「パイパイ…」

 空耳か?

 「パイパイ…」

 まただ。

 「パイパイ…」

 間違いない。確かにそう言っている。

 いきなりどうしたんだ母さん。おチチの時間かい?

 

 オチを言ってしまえば、新聞の折込チラシを見ながら、今話題のQRコードスマホ決済アプリ『PayPay』を「パイパイ」と読んでいたのでした。

 考えてみれば、誤読して当然。私は、以前から「払う=Pay(ペイ)する」という言い方には馴染みがありましたし、今やスマホ決済の代名詞でもある中国発『支付宝(アリペイ)』『微信支付(ウィーチャットペイ)』のことも、『習近平』のことも知っていましたし、後発の『LINE Pay』『楽天ペイ』のことも知っていましたから、母の誤読は逆に、“その発想はなかった”感じでした。

 そうか。むしろパイパイと読むほうが自然なのかも知れない、、。そう思った瞬間、先の「PayPay100億円あげちゃうキャンペーン」のときに、例えばヤマダ電機で、店員さんに支払い方法を聞かれたとき、少し恥ずかしそうに「パイパイで…。」って言ってしまう人がいたかも。いや、もしかしたら、店員さんの中にもPayPayの読み方を知らなかったり、すごく“優しい”人がいて「それではまずお客様のパイパイを立ち上げてください。」みたいなやりとりがあったかも知れません。うわぁ。これはもう完全にシチュエーションコントの出来上がりです。既に志村けんさんや内村光良さんあたりは、台本書いてるかも知れないマンです。登場人物の性別や年齢、設定などを変えれば、チャイルドものからアダルトものまでたくさんのバージョンができそうです。

 ドリフコントっぽく仕上げるなら、基本場面はコンビニ、女性店員役は優香さんか小池栄子さん、お客の中年サラリーマン役は志村のけんさんがお約束でしょう。ああ、いかりやチョーさんバージョンも見てみたい。まあどちらにしても、後ろに並んでいるお客さんには仲本工事さんか高木ブーさんかなぁ。ゲストに温水洋一さんでもいいかも知れない。それで、みんな自分の思ってる読み方があって正解がわからなくて、各々密かにガラケーとかスマホとか広辞苑とか角のタバコ屋のおばあちゃんとかを使って、正しい読み方を知ろうとするんだけど、確かなことがわからなくて、、ところでそのタバコ屋のおばあちゃん役は松金よね子さんで「あたしゃ知らないよ。何か買ってくれたら知ってる人呼んできてあげてもいいけど、あんたここで“待つかね”?」みたいな隠れメッセージがあるかと思ったら、呼ばれて出て来たのが、左とん平さんで「ヘイユウ?お前か?この俺を呼んだのは!」って言いながらあの世から戻って来るときかかる曲はもちろん『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』だし、


とん平のヘイ・ユウ・ブルース Tompei's Hey You Blues - 左 とん平

「ヘイユウ!ヨウツベだか何だか知らねぇけどよぉ、おめぇさん、いつもタダでオレの曲聴いてるそうじゃねぇか。たまにはちゃんとギャラ払ってくれよな?もちろん、払いは“とんPay”だぜ!…って、冗談っだっつうの。まああの世じゃ金持ってても仕方ねぇからな、おめぇさんの好きにしろよペイペー。」みたいなやりとりがあったりなかったりで、みんなもう「ペイペイ」か「パイパイ」か「パイペイ」か「ペイパイ」かなんだかわからないことになってきたりもするんだけど、志村けんのバカ殿様的にはやっぱり「オッペイ(オッパイ)」だよねー、ってなって若い女性店員とどうにかなろうとするんだけど、松金よね子の「じゃあ、アタシの(オッペイ)を…」っていうのを軽く挟んだりしつつ、遂には女性店員が怒って「んなわけねぇだろ!」ってお客(志村けん)の顔面めがけて生クリームがたっぷり乗ったパイ投げつけるんだけど、上手くよけられて後ろに並んでる違うお客さんに当たってしまって、そこからいろんな人が入って来てはパイが店内を乱れ飛ぶ展開になって、最後は温水さんの顔面にパイがヒットしてひと言、「ダッフンダ!」かなぁ。でも、やっぱりそんな食べ物を粗末に扱うようなことは良くないから、アダモちゃんに“アレ”出してもらって、場が冷え切った感じで終わらせたいなぁ、でも今のPay世代はアダモちゃんのことも全く知らないだろうし、そもそも人種差別に敏感な時代だからなぁ、ああいうのは世間的にもスポンサー的にもアウトなんだよ。「ナイキ」や「H&M」、「D&G」もエライことになったしなぁ。みたいなことで、たぶんアダモちゃん出したくてうずうずしているギョーカイの人もいるんだろうなぁ、バカだなぁ。バカだけど、気持ちわかるなぁ。わかる、わかるよ。だからわかる人、わかろうとしてくれる人に見て欲しいなぁ。

 それでは参りましょう。島崎俊郎さんで、平成最後の“ペイ”です。

 どうぞ!


島崎俊郎のアダモちゃん・最終回 1989年

 みたいなくだらないことを、ずっと考えながら来年も生きていけたらなぁと思う年の瀬、みんなみんなお疲れさま。

 いいことありますように、ペイッ!

クリスマス・ソング

 だんだんと数を減らしているせいもあってか、今年は例年よりも早く(自己最速!)に年賀状を出し終え、クリスマスを待ちの姿勢で迎えることができました。

 とは言っても、気の利いた思い出や予定が待っているわけでもないのですが、それでもけっこう好きですクリスマス。

 まず、基本カラーが、赤と白っていうのがいいですね。めでたくて。

 あと、おじいさんとトナカイっていう組み合わせもいいです。もしこれがおじいさんとヨーゼフかパトラッシュなら最高です。暖炉のある部屋で、おじいさんはロッキングチェアで、ヨーゼフ(パトラッシュ)はその足元でお昼寝とか、もうこれ以上の平和な光景はないです。トナカイちゃうけど。

 鈴の音もいいですね、シャンシャンシャン…っていうの。ひょうきん族世代には、お別れの音にしか聴こえないのかも知れないですが、鈴って抑え気味の高揚感が生まれるから好きです。

 クリスマスソングだと、『St.claus is coming to town(サンタが街にやってくる)』が定番でしょうか。鈴の音も似合うし。


santa claus is coming to town ~ Japanese

 似た曲ではこっちも好きです。


THIN LIZZY - The Boys Are Back In Town (1976 UK T.O.T.P. TV Appearance) ~ HIGH QUALITY HQ ~

 すみません、似てたのタイトルだけでした。

 

 スノーマンのテーマも好きです。 この透明感のある声、この時期にしか出ない声。


スノーマン Snowman

 この映像を見るといつも、この子あとで風邪引かなかったかなって思います。

 

 あと、時々とても聴きたくなるのが、2001年にリリースされたピチカート・ファイヴのアルバム『さ・え・らジャポン』の11曲目に収録されている『12月24日』内のふかわりょうさんのネタです。※33:38~
Pizzicato Five - Çà et là du Japon (2001) Full Album

 個人的には、ふかわりょうとつぶやきシロー、そしてスギちゃんの面白さは世間から過小評価されていると思っていて、特にふかわりょう氏!

 

 ところで近頃、Queen人気が再沸騰だそうで。これは昨今のLGBT関連の盛り上がりと関係あるのかな、などと穿った見方もしつつ、私はファンというわけでもないのですが、最近はこの曲『Another one bites the dust』をよく聴いています。


Queen - Another One Bites the Dust (Official Video)

 邦題は『地獄へ道連れ』だそうです。メリークリスマス!

 で終わるのも、ちょっとどうかと思ったので、こちらの曲『Thank god it's Christmas』も貼っておきます。


Queen - Thank God It's Christmas 'Merry Christmas!'

 

 それでは、みなさん良い年をお迎えください。

 私は、これから駅前にラストクリスマスを歌いに行こうと思います。

  

 

酒と泪とアセトアルデヒド【完】

 いち子は、インテリア関係の販売会社に就職した。一息つける場所を残しておきたかったのか、バイト先はすぐには辞めず、仕事帰りに来たりしていた。

 いち子の配属先のお店は、大阪の有名な商店街の中にあった。

 「へたっちょも、遊びに来てよ!」とよく言っていたが、私がそのお店に“遊び”に行くことはなかった。

  私は、就職活動の時期を迎えていた。当時は、テレビ局や新聞社に憧れていて、ダメだったら地元に帰って就職することになっていた。この頃の時系列をよく覚えていないのは、日々追われることが多かったからだろう。

 慣れ親しんだバイト先は、店長をはじめ顔ぶれが随分と入れ替わった。不思議なもので、お世話になった人たちがいなくなると、自分の居場所はここではないような気になってくる。単に「辞めたい」ということではなく。

 

 ついに私にも、バイト先を去るときが来た。

 やがてはこの街も。

 

 どのような経緯だったのかは忘れたが、バイト先“だった”場所の最寄り駅の前で、私といち子は二人きりでいた。夜だったと思う。

 お互いの近況報告などをしていたときだろうか、私はいち子に、近々地元に帰ることを告げた。

 いち子に驚いたような様子はなかったが、意外なことを私に言った。

 「◯◯がな、いち子、もうへたっちょと付き合ったら?って言うねん。」

(◯◯は、いち子の同級生で大親友の女の子。私はほとんど話したことがないが、バイト先にも何度か連れてきていた。Kさんとのこともずっと相談していたらしい。)

 「今更かーい!」とツッコミたくはなったものの、これが彼女の精一杯の告白なのかも知れないと思った。

 しかし、私は決められなかった。

 これは今も続く、私の悪い癖だ。こういうときに考えなくてもよいことを考えてしまう。始まってもいないのに、問題ばかりが浮かぶのだ。仕事のこと、物理的な距離のこと、あの子のこと、、、などなど。済んだ話とは言え、Kさんのことも消化不良のままだった。

 「今は無理やけど、もし30過ぎて二人とも独りやったら、結婚でもするか!」

 私は冗談めかして答えた。これをいち子がどう受けとったのかはわからない。

 「めっちゃ先やん!」

 この頃の二人にとってみれば、30歳は30光年先くらいのイメージだった。結局このやりとりは、いつもの掛け合い話の中に埋もれていった、、、

 

 「ほな。またいつか、ここでな!」

 「うん!」

 お互い笑顔だったように思う。

 このとき私は、二人にはもう違う時間が進んでいることを感じた。

 

 その後、私は地元に戻ったのだが、転職したり、色々あったりで、光のように歳は過ぎた。その間、一度もいち子と会うことはなかった。

 会うことはなかった、、のだが、実は何度か会いに行ったことはある。いち子が、勤めている(はずの)お店がある大阪へ“遊び”に、ということで。私は、不自然に店の前を行ったり来たりしたのだが、どうしても中に入れなかったのだった。

 

 私は、いち子のことをずっと一途に想っていたわけではない。しかし、あの日の約束(のようなもの)は、常に頭のどこかにあった。

 30を過ぎた頃、私は確かめたくなった。中二病?否定はしない。

 

 いち子のケータイは変わっていなかった。

 休みに京都で会う約束をした。

 

 久しぶりに見るいち子は、さすがに見た目は年齢相応になってはいたものの、私の顔を見るなり「へたっちょ!元気にしてた!?」と昔と変わらない調子で駆け寄ってきた。

 駆け寄ってきた、、ら、と私は期待して待っていた。

 

 実際のいち子は、見た目はあまり変わっていなかった。

 「あんまり変わらへんね。」

 私のことも、そう言っていた。

 しかし、最後まで私のことは、苗字に“くん”付けで呼んだ。

 子どものように、思いつくままに話しかけてくることはなく、私の反応を確かめてから話しているようだった。二人のテンポは、ぎこちないアダージョのようだった。

 街をぶらりとしたあとに入った喫茶店で、あれから彼女のお父さんの会社が倒産したと聞いた。いち子も随分と苦労をしたようだ。

 ちなみに、大阪のお店は異動になって、私が行った頃はもうそこにはいなかったらしい。そんな話をしていたかと思うと、急に自分の妹の自慢話を始めたりするところなどは相変わらずで、懐かしい気持ちにもなったが、会話が途切れると私はチラチラと時計を気にしていた。

 あの店には、随分と長く居たような気がする。

 外に出て、二人は駅まで一緒に歩き、別々のホームから電車に乗った。

 

 「昔、最後に会ったときのこと覚えてる?」

 

 近況報告や昔話はたくさんしたけれど、その言葉はついに出なかった。私からも、いち子からも。

 

 それから、何度か年賀状のやりとりがあったりもしたのだが、やがてどちらからか無くなり、今は音信不通だ。

 

 先ほど、ケータイを確認したら連絡先はそのまま残っていた。

 こうして物語に書くまで、そんなこともすっかり忘れていた。 

 

 元気か?

 今年も年賀状は出さへんけど、へたっちょは今日も便器です!

 ほなね。風邪引くなよ。


河島英五 【Live】 酒と泪と男と女

 

 以上、酒と泪とアルデヒドでした。

酒と泪とアセトアルデヒド【6】

 私は、近頃いち子の様子がおかしいと感じていた。妙によそよそしいのだ。

 誰でも機嫌の悪いことくらいはある。こちらがいつもどおりに接していれば、そのうち元に戻るだろう。最初はそのくらいに思っていた。

 しかし、どうやら私にだけ様子がおかしいことがわかってきた。

 いつもなら私に真っ先に世見話をしに来ていたのがなくなった。「へたっちょー!」と私を呼びつけてやらせていた生ビール樽の交換も後輩に頼むようになった。

 このようなことが続いて、最高トリオのコンビネーションもぎこちなくなり、私は苛立ちを隠せなくなってきた。なぜ私だけが避けられなければならないのだ。私には全く心当たりがない。

 「なんでや!」

 ついに私は、厨房でいち子に不満をぶつけた。いち子に対して声を荒げたのは、これが初めてだったと思う。いち子は、ビクッと怯えた顔をした。

 「しまった!」と私は思った。今までいち子のあんな顔は見たことがなかったし、させてはいけなかった。気持ちとは裏腹にそこから更に詰め寄ったような気もするが、あまり思い出せない。

 しかし、いち子の口から明らかにされた事実は覚えている。

 「Kさんに言われた」というのだ。

 これにはさすがに驚いた。いや、呆気にとられたに近いか。

 

 Kさんとは、あのKさんのことだ。彼は、私といち子の関係を最初の頃からずっと知っていて、しかもそれを楽しんできた人ではないか。私(といち子)の兄貴分であり、今は最古参としてバイトのみんなをまとめなければいけない立場でもある。

 「どんなけデストロイヤーやねん!」

 と、Kさんにツッコミを入れる余裕などは当然なく、私は信頼できる同僚からの情報や過去の出来事を整理し、現状把握に努めた。

 ああ。そう言えば、、

 

 バイトが終わって、そのまま飲み会をしたことがあったが、いち子はKさんと随分と一緒にいたような。いち子には、キャラ的に誰にでもそういうところがあるし、Kさんは「やめろー!」とか言ってはしゃいでいたような記憶はある。で、その日は結局、カラオケ部屋に二人で入って出てこなくなって、私はウォッカを飲んで随分と荒れていたような。まあでも、昔から似たようなことはあったしなぁ。 

 ん?二人は付き合ってる?いつから??

 でも、おかしいではないか。Kさんには、恋人がいる。言い過ぎかも知れないが、Kさんにはもったいないくらいの人だ。

 彼女は、バイト先にもよく遊びに来ているし、私やいち子ともすっかり顔なじみである。Kさんより年下だけど、姉御っぽいところがあって、怒らせるとすごく恐いことも周知の事実だ。

 だから、もし浮気するにしても、私や恋人を裏切ってまでバイト先の後輩、しかもかつて“圏外”扱いしていた子に手を出す???というか、いち子が私との“友だち”関係より、Kさんとの“報われない”関係を選んだというの???

 どっちもないだろう、フツー。そうだ、これは何かの間違いだ。よし、ここはひとつ穏便に。しばらく様子を見ることにしよう!

 というわけでもなかったが、私は妙に落ち着いていた。私の代わりに怒ってくれる人がいたせいかも知れない。 

 

 結論から言えば、いち子は、いつからかK(呼び捨て)のことが好きだったのだ。Kと、いつどこまでの関係になっていたのかはわからないが、彼に支配欲が生まれ、いち子はそれを受け入れていたのだから、まあ、それなりの関係にはなっていたのだろう。

 つまり、私がへたっちょなだけだったのだ。

 

 事の顛末は、やや端折るが、この一件がKの彼女に知れることはなかった。いち子も目を覚ましたのか、Kから気持ちは離れていった。理由は、いくつかあっただろうが、ひとつは束縛がしんどかったからのようだ。

 後にわかったのだが、Kがルーズになっていたのは、人間関係だけではなくて、仕事の中身もだった。Kは、バイト先からの信頼も失っていったのだった。

 

 こうして私といち子は、元の“フラット”な関係に戻ったのだが、お互いの就職(活動)のことなどもあり、バイト先で一緒になる機会は少なくなっていった。

 だんだんと別れのときが近づいていた。


(메종일각 OST) ED 2 시네마 Cinema Full Version

 さて次回、静かなラストシーンへ?

 

酒と泪とアセトアルデヒド【5】

 バイト先の厨房でいち子に交際を断られた後、確かにフラれたショックはしばらくあったが、いち子との関係は変わらなかった。

 これは決して、負け惜しみや強がりなどではない。バイト先の気の合う二人のままだった。どちらかが(まあ私だ)が、これ以上を欲しなければ、ずっと続くはずの関係だ。呼び名も“へたっちょ”のまま。

 そうこうしているうちに、私にも後輩ができて、仕事を教えたりもするようになった。新しく年下の女の子が入ってきて、バイト先の年上の先輩のことを好きになるという話はありがちだけれど、私の後輩は男の子だった。

 彼は、テニスが得意で体格が良く、カラオケではGLAYの『HOWEVER』を歌い上げるような男前はあなたでしたFuuuuuU!

 そして、ひとりっ子だったせいか、やがて彼は私のことを兄のように慕ってくれるようになった。

 バイト先のシフトは、彼と私といち子の3人が一緒になることが多かった。彼は、仕事を覚えるのが早く、なかなか頼れる後輩だった。私といち子の仲もよく理解していた。今でも、この頃のトリオは最高の取り合わせだったと思う。

 しかし、バンドなどにもよくある話だが、男2人に女1人のパターンは、いったん恋愛要素が絡んでくると、それまでの関係性が変わってしまうものである。

 後から入ってきた彼のことを、いち子が好きになってしまい、私はいち子と彼の幸せや全体のバランスを考えて距離を置かざるを得なくなってしまうのである。

 彼は、熱く柔軟さに欠けるところはあったが、人を裏切るような人間ではなかった。私が二人をしっかりと祝福しさえすれば、私が失うものは最小限で済むのだ、、、私は経験的にそれを知っていた。

 

 のような妄想をしたことがないこともなかったが、実際には、いち子は彼の事を自分の手下(まあ私だ)の手下くらいにしか見ておらず、そんなことには至らなかった。

 

 トリオの良好な関係はしばらく続いたが、やがて青天の霹靂が私を襲った。

 いち子が私を避けるようになったのだ。

 

(続く)

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参考)


GLAY HOWEVER

最後まで歌いたいけど(普通の人には)歌えない。

そのもどかしさが罪。